老化を促すAGEとは？

今、アンチエイジング（抗加齢）医学のフィールドでは、「糖質の過剰摂取は老化を加速させる」というのが定説となっています。まず何と言っても、糖尿病。糖尿病は尿に糖が出る病気ですが、その本体は高血糖病です。血液中の糖が常時高い状態が続くと体のたんぱく質が糖化という反応を起こし、血管が蝕まれていきます。特に細い血管が先にやられ、これによる合併症が糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害です。最終的には心臓や脳の血管が動脈硬化を起こし、心筋梗塞、脳卒中という即、命に関わる病気を招きます。そう、高血糖イコール血管の老化なのです。

実は、この糖化という現象、糖尿病の患者さんだけでなく糖尿病でない人でも気をつけないといけません。まずは糖化について簡単に解説しておきます。
私たちの体のほとんどはたんぱく質から成り立っています。そしてこのたんぱく質は体内に入ってきた糖と結びつきやすい性質を持っています。過剰な糖は体のたんぱく質と反応を起こし、変性したたんぱく質AGE（最終糖化産物）という物質を生み出します。そして、このAGEは老化を促進させ、様々な病気・疾患を招く元凶であることがわかってきたのです。AGEは劣化したたんぱく質であり、本来の機能を果たさなくなっています。血管のたんぱく質が糖化すると血管の壁に炎症反応が起こりやすくなり動脈硬化が進みます。骨に起こると骨粗しょう症、眼で起こると白内障、脳での糖代謝異常はAGEと関連してアルツハイマー病を引き起こします。美容の上でもこのAGEは問題となります。肌のたんぱく質が糖化を受けるとしわやたるみなどが進んでしまうのです。最近では、抗糖化の作用を謳う化粧品も出ているくらいです。

過剰な糖摂取でがん発症の可能性も

糖化とは直接の関連はありませんが、糖の過剰摂取の弊害はがんの発症にも関連があることもわかってきました。がん細胞は正常の細胞に比べて、3〜8倍のブドウ糖を取り込まないと生きていけません。がん年齢と言われる50歳を超えて、糖質を過剰摂取することはがんに餌をやっているのと同じとも言われているくらいです。
以上からもわかるように、糖質の過剰摂取はアンチエイジング的に大変問題があるわけです。それ故、WHO（世界保健機構）は2015年3月に「砂糖などの糖類の摂取は1日25g以下にするのが望ましい」という指針を発表しました。それでは、私たち日本人が今いったいどれくらいの糖質を摂取しているのか？前慶応義塾大学特任教授の栗原毅先生が行った研究データをお示します。一日の食生活で摂取している糖質量を調査したところ、基準値 男性250g/日、女性200g/日に対し、実際に摂取している糖質の総量の平均は男性309g/日、女性は332g/日でした。これは男性では一日角砂糖約15個分、女性では33個分が過剰摂取ということになります。ちなみに全体平均は320g/日で、これを角砂糖に換算すると約80個分になります。

原始時代からの記憶が糖質依存を作り出す

なぜこれほどまでに私たちは糖質を摂り過ぎてしまうようになってしまったのでしょうか？ご存知の通り、糖はエネルギーとなります。人間は食べ物の中に含まれる糖質を分解しブドウ糖に変え、それをエネルギーとして利用して生きているのです。糖は脳や体を働かせるために必要不可欠なものであることは事実です。日々飢餓と背中合わせであった原始時代、人類はこの糖質をなんとかして得ることで生き延びてきました。この「記憶」が糖質への依存を作り出しているのです。また、糖質を過剰に摂取すると一気に血糖値が上がります。上がった血糖値を下げるのはすい臓から分泌されるインスリンというホルモンです。糖質摂取量がほどほどの時は、インスリン分泌は基礎分泌量の２〜３倍なのですが、過剰摂取した際には10〜30倍ものインスリンが分泌されます。そのインスリンによって血糖値は一気に低下するのですが、その時に空腹感を覚え、また糖質を摂りたくなります。そう、糖質には強い依存性があるのです。糖質は“おいしい！”と感じると同時に多幸感や達成感をもたらすこともわかっています。糖質が体に入った際に起こるこの多幸感、実は麻薬（コカイン）を摂取した時に感じるものと同じ類のもので中毒性があるのです。「糖質はマイルドドラッグ」と言っている専門家もいます。